
お子さんの乳歯が抜けて永久歯が生えてくる頃になると、歯並びが気になるという親御さんは多いのではないでしょうか。とはいえ、従来の小児矯正治療は永久歯に生え変わらないと治療ができないため、やむなくそのままにしている方もいらっしゃると思います。
しかし、まだ乳歯が残っているうちから使える矯正装置があります。それが、「プレオルソ」「T4K(もしくはT4Kトレーナー)」と呼ばれるものです。本記事では、この2つの装置はどのような装置なのか、詳しく解説します。
目次
1 プレオルソ/T4Kとは
プレオルソとT4Kは、両方とも子ども用のマウスピース型矯正装置のことを指しますが、装置をつける適齢期やマウスピースの形はそれぞれ異なります。ここでは、プレオルソとT4Kに関する基礎知識をお伝えします。
1-1: プレオルソ/T4Kは何のために使うもの?
プレオルソ/T4Kは、口周りの筋肉バランスを整えることで歯並びや嚙み合わせが悪くなるのを予防するためのものです。
現代の子どもたちの4人に3人、もしくは5人に4人が嚙み合わせや歯並びに異常があると言われています。その原因は、やわらかい食べ物を口にすることが多いため口元の筋肉がゆるんでおり、口呼吸になっていることです。
プレオルソ/T4Kをつけ、口周りの筋力トレーニングを行うことで歯並びや嚙み合わせが改善できるほか、口元が引き締まり、口呼吸から鼻呼吸にすることができます。また、正しい飲みこみ方ができるようになるという効果もあります。
1-2: プレオルソとは
プレオルソとは、岡山県の矯正歯科医が開発したマウスピース型矯正装置で、5~10歳くらいまでの骨の柔らかい時期に使うことで効果を発揮します。プレオルソはさまざまな症状に対応できますが、症状によっては以下のような特定の症状専用のものもあります。
- Type-1:出っ歯(上顎前突)や嚙み合わせが深い(過蓋咬合)場合に使用します。
- Type-2:前歯がかみ合わない(開咬)場合に使用します。
- Type-3:受け口(反対咬合)の場合に使用します。
1-3: T4K(ティー・フォー・ケー)とは
T4Kとは、2~5歳ごろから小学生までの間に使用できるマウスピース型矯正装置です。実はT4Kがあるのは日本とシンガポールのみであり、世界的に見るとプレオルソとT4Kはマイブレイスに統一されつつあります。T4Kの仕上げにマイオブレース治療をすることもあります。
T4Kにも、ソフトタイプのスターティングトレーナー(装着期間6~8か月)とハードタイプのフィニッシングトレーナー(装着期間6~12か月)の2種類のタイプがあります。
T4Kは、トレーナーの部位ごとに機能が分かれていることが特徴です。
- トゥースチャンネル・・前歯を整列させます
- タンタグ・・・・・・・舌を積極的に訓練します
- タンガード・・・・・・舌が出るのを防止します
- リップバンパー・・・・唇の筋肉の過剰な動きをおさえます
- クラスⅠ切端咬合・・・機能性装置と同じ
- 翼状型ベース・・・・・・正しい顎の成長を助けます。
1-4: プレオルソ/T4Kで改善できるくせ・症状
プレオルソ/T4Kを使うと、口周りの筋肉がきたえられるので、歯並びや嚙み合わせのほか、以下のようなクセや全身的な症状の改善も期待できます。
- 舌のくせ・口呼吸・指しゃぶりなど
- 咀嚼(噛むこと)・嚥下(飲み込むこと)、発音などの口腔機能
- いびき・睡眠時無呼吸
2 プレオルソ/T4Kのメリット・デメリット

プレオルソ/T4Kはいいところがたくさんありますが、デメリットもあります。ここでは、プレオルソ/T4Kのメリット・デメリットについて見ていきましょう。
2-1: プレオルソ/T4Kのメリット
プレオルソ/T4Kには次の5つのメリットがあります。
・痛みが少ない
プレオルソ/T4Kはポリウレタン製のマウスピースなので、痛みや違和感が少ないのが特徴です。また、プレオルソ/T4Kは熱可塑性があるので、お湯をかけることでお子さんの口腔の形にあわせて調整できます。
・取り外し自由
プレオルソ/T4Kは取り外しが自由なので、食事のときや歯磨きのときには取り外すことができます。歯磨きにも支障がないので、虫歯のリスクも減ります。
・装置をつけるのは日中1時間と就寝中だけ
学校や幼稚園、保育園に行くときはつけていかなくてもよいので、お友達にからかわれたりすることはありません。
・後戻りの心配があまりない
一般的な矯正治療は、歯をムリヤリ動かすのでしばらく保定装置をつけなければ後戻りしてしまいます。しかし、プレオルソ/T4Kは歯並びが悪くなる原因を取り除くためのものなので、後戻りの心配があまりありません。
・プレオルソ/T4Kのみで矯正治療が終わることも
うまくいけば、小児矯正治療の第1期に移行せず、プレオルソ/T4Kのみで矯正治療が終わることもあります。そうすれば、プレオルソ/T4Kにかかる費用のみですみますし、子どもへ必要以上に負担がかかることもありません。
2-2: プレオルソ/T4Kのデメリット
プレオルソ/T4Kは以下のようなデメリットもあります。
- 子ども自身がやる気にならないと効果が出ない
プレオルソ/T4Kは、子ども自身がきちんと装置を指定された通りの時間つけていなければ効果があらわれにくくなってしまいます。そのため、治療効果が出るかどうかは、装置をつける子どものモチベーションに左右されます。
・親の協力が不可欠
子どものモチベーションをキープするには、親の協力も必要不可欠です。口周りのトレーニングを親子で行うなど、治療に親も一緒に取り組む姿勢を見せることが大切です。
・小児矯正治療が必要になることがある
歯並びの状況によっては、永久歯が生えそろってからワイヤーを使った小児矯正治療(2期治療)への移行が必要なことがあります。
3 プレオルソ/T4Kを使った治療の流れ

プレオルソ/T4Kを使った治療は以下の流れで進みます。
3-1: ①カウンセリング・検査
担当医がお子さんのお口に関するお悩みをお伺いし、プレオルソ/T4K治療の流れや治療期間、費用についてお話します。
希望があればそのままレントゲン撮影や口腔内写真の撮影、歯周検査、歯型取りなどを行います。
必要に応じて虫歯治療やお口の中のクリーニングもここで行います。
3-2: ②治療開始
プレオルソもしくはT4Kトレーナーをお渡しするので、早速はめていただきます。
また、プレオルソ/T4K治療には欠かせないお口周りの筋力トレーニングのレクチャーも行います。
・あいうべ体操
「あー」「いー」「うー」「べー」と大きく口を動かすことで口周りの筋肉を鍛え、きちんとお口を閉じられるようにするためのトレーニングです。1日30セット行います。
・NK体操
片手をあげて反らせると同時にもう片方の脚を後ろに持ちあげるという、背筋を伸ばして姿勢を矯正するための運動です。左右10回ずつ行います。
・ガムトレーニング
口を閉じたまま、ガムを左右それぞれで方噛みすることで、舌圧のトレーニングを行います。1日3分以上繰り返すようにします。
3-3: ③定期健診
最初は1~2か月に一度通院してお口の中の状態をチェックします。その後は徐々に間隔を開けて、3か月に一度くらいのペースで通院することになります。
定期健診ではお口の中の状態にあわせて装置の調整も行います。
4 プレオルソ/T4Kにかかる費用

プレオルソ/T4Kにかかる費用は、大きく分けてマウスピースの費用・検査料・調整料の3つです。装置を紛失したり破損した場合は、その分の費用が別途かかります。
4-1: プレオルソにかかる費用
プレオルソにかかる治療は治療開始前に全額支払うトータルフィー制のクリニックと通院のたびに治療費を支払う処置料別払い制のクリニックで料金体系が大きく異なります。
<トータルフィーの場合>
歯科医院によりおよそ80,000円~150,000円と幅があります。
トータルフィーにどこまで含まれるのかは、治療を受けられる歯科医院にお問い合わせください。
<処置料別払い制の場合>
初期費用が50,000円前後、検査料が15,000円~20,000前後、調整料(観察料)が2000~5000円前後かかります。
4-2: T4Kにかかる費用
T4Kにかかる費用は以下のとおりです。
・トレーナーと検査料:およそ50,000円~80,000円
・調整料・指導料:およそ2,000~3,000円
・追加トレーナー:およそ10,000円
プレオルソ/T4Kを使った治療は子どもが小さな時期から始められるため、できるだけ早く始めることでワイヤー矯正などの従来の治療をしなくてもよくなる可能性があります。お子さんのお口について気になることがあったときは、プレオルソ/T4Kが使える年齢であれば実際に治療を受けてみられることをおすすめします。