
結論から言うと、トータルフィーとは矯正治療で必要な全ての費用を、事前に全額支払うシステムです。
矯正治療は、健康保険が使えないので費用は自己負担で、高額になりがちです。
治療費が予めわかっていれば、準備や計画を立てやすくなります。
今回は、矯正治療の総額制(トータルフィー)について解説していきます。
矯正治療費の支払い方法に悩んでいる方は、是非この記事を参考にしてください。
目次
1 矯正治療の支払い方法

矯正治療の支払い方法には、次の2つがあります。
・総額性(トータルフィーシステム)
・処置別払い制度
それぞれについて詳しく解説していきます。
1-1:総額性(トータルフィーシステム)

矯正で必要な治療費を全て提示しているのが、トータルフィーシステムです。
矯正治療を始める前に、治療開始~治療完了(保定期間が含まれるかは医院によって異なります。)までの費用を事前に支払うようになります。
矯正治療費の全額が始めにわかるので、治療費の準備をしやすいのが特徴です。
1-2:処置別払い制度

処置別払いとは、処置した内容に対して支払いをすることです。
矯正治療の場合には、「矯正装置を取り付けた日」と「通院した日」では支払う金額が変わってきます。
例えば、ワイヤー矯正が70万円のケースでは、ワイヤー装置を歯に取り付けた日は装置代の70万円を支払います。
その後の月に1度の通院では、調整料として5千円の支払いが必要です。
上記のように処置別払いでは、その日行った処置によって支払う金額が大きく変わったり、通院のたびに治療費を支払ったりするので、「今どのくらい支払ってるの?」「今後、費用がどのくらいかかるの?」と金額が不透明になりやすく、わかりにくいのが難点です。
2 矯正治療費の内訳

矯正治療は次の3つの段階に大きくわけることができます。
・矯正治療開始前
・矯正治療中
・矯正治療後
それぞれの支払いシステムを比較しながら、確認していきましょう。
2-1:矯正治療開始前

相談料と診断料の2つが、矯正治療開始前にかかる費用です。
まず相談料は、無料~5千円ほどかかります。
初回検診料金として、相談料の中に診断料を含めている歯科医院もあります。
診断料は、矯正の治療計画を立てる時に欠かせません。
セファロ(頭部のX線写真)の撮影や歯の模型を採取して、矯正装置や治療の流れを決める判断材料にします。
また最近では、外科的矯正が必要になる時には、CT(3次元で骨の厚さや歯や神経の位置を確認できる機器)撮影を行う歯科医院も増えています。
診断料は、一般的に無料~6万5千円が相場になります。
トータルフィーシステムでは、相談料と診断料が矯正治療費の中に含まれていないことがほとんどです。
相談料や診断料は、矯正治療開始前に行う検査のため、トータルフィーシステムの場合でも矯正費とは別で用意する必要があります。
2-2:矯正治療中

まず、処置別払いの方法だと、矯正治療中に装置代金を支払います。
装置の金額は、使用する装置の種類によって変わります。
また、処置別払いの歯科医院は装置代とは別に、毎月通院するたびに装置処置料、調整料の支払いが必要です。
調整料は通院1回で、約5千円~1万円が一般的です。
さらに、処置別払い制では、矯正費とは別でメインテナンス料が必要になります。
メインテナンスの頻度は、歯科医院によって違ってきます。
他にも、処置別払い制度は、追加料金がかかる場合があります。
例えば、矯正治療が予定していた期間で完了すれば問題はありません。
しかし、思っていたより歯が動かなかったり、装置が外れて付けていない期間があったりすると期間中に治療が終わらない場合があります。
特に、見た目の美しさは人それぞれ異なります。
矯正完了後の歯並びを見て「自分がイメージしていた歯並びと違う」「もっと歯並びを美しくしたい」と感じる方もいるでしょう。
ただ、「もっと理想の歯並びを追求したい!」と思ったら、追加で費用がかかってしまいます。
そうなると、結果として矯正治療費も予定よりかなり高額になってしまいます。
一方で、トータルフィーの場合は、矯正治療中の費用は事前に支払い済なので、毎月の通院処置料や調整料はかかりません。
また、予定していた期間より治療期間が延びても追加料金は必要ありません。
治療前に提示した金額以上の料金は、期間が延びても変わることなく、何回でも通院が可能です。
そのため、理想の歯並びを諦めることなく、自分が納得いくまで追求することができます。
他にも、トータルフィーシステムでは、矯正方法が変わっても追加料金は発生しません。
例えば、歯や顎の動きや患者さんの協力度合いによっては、使っていた矯正装置ではなく、別の装置に変更するケースもあります。
特に、子どもは顎の成長が著しく、今まで使用してきた装置が合わなくなることがあり、成人に比べて変更することが多いです。
装置を変更する時には、材料費の追加料金が必要になるのが一般的ですが、トータルフィーシステムでは、途中で装置が変わっても追加料金はなく、提示された金額だけの費用になります。
2-3:矯正治療後

矯正装置を外して治療が完了したら次は、保定期間という段階に入っていきます。
そもそも、歯には元の位置に戻ろうという性質があり、矯正装置を外したまま長い時間を過ごすと、歯が少しずつ元の歯並びに戻っていきます。
この現象を「後戻り」と言います。
せっかく長い時間と高額な治療費をかけて歯並びを整えても、後戻りしては意味がありません。
後戻りを防ぐためには、リテーナーという装置を歯に付ける必要があります。
保定期間中には、保定料(リテーナー製作料)と保定観察料がかかります。
・保定料(リテーナー製作料)
リテーナーには次の3つの種類があります。
・マウスピースタイプ
・歯の表面をワイヤーで固定し、裏側にプラスチックのプレートが付いているタイプ
・前歯の裏側に細いワイヤーを接着する固定タイプ
どのリテーナーを使用するかは歯科医院によって違い、保定装置の料金は、約5千円~6万円と種類によって変わってきます。
処置別払い制度では、矯正治療費に保定装置の料金が含まれていないので、リテーナーを装着した日にはリテーナー代が発生します。
一方で、トータルフィーシステムは、矯正治療後の保定期間にかかる費用も含まれています。そのため、保定装置の料金も支払う必要はありません。
・保定観察料
保定期間中には、数ヶ月~1年に数回の通院をして経過観察を行います。
経過観察料は、1回3千円が相場です。
処置別払いシステムは、通院のたびに経過観察料を支払うようになります。
それに比べて、トータルフィーシステムは、経過観察料も矯正治療費の中に含まれているので支払いは必要ありません。
3 治療の難易度に差があっても治療費は変わらない?

トータルフィーシステムは、全ての症例に対して同じ治療費を提示するわけではありません。
確かにトータルフィーシステムは、治療費が固定なので、歯並びを整えるのが簡単な症例と難しい症例でも治療費が変わらないと誤解されがちです。
しかし、矯正治療の総額を提示するのは、しっかりと診査、診断をした後です。
精密な診査をした結果を元に、適正な治療費を提示しています。
そのため、歯並びを整える難易度の高さや、患者さんが求める理想の歯並びの形によって、矯正費の提示額は変わります。
4 矯正治療費が「みえる」のはトータルフィーシステム

処置別払いは、矯正治療が総額いくらかかるのかが不透明で、わかりにくいシステムです。
そのため、矯正完了後には「予想していた金額より、かなり費用がかかっているな・・・・・・」と感じる方が、少なくありません。
その点、トータルフィーシステムは、矯正治療を始める前に必要な費用が全額わかるので、費用の計画を立てやすいのが強みです。
ただ、日本ではトータルフィーシステムは、比較的新しい支払いシステムなので、取り入れていない歯科医院もあります。
トータルフィーを活用したい場合には、まずこのシステムを取り入れている矯正歯科を探すところから始めましよう。