
歯並びが悪いと、正しく発声できなかったり、滑舌が悪くなったりすることがあります。
高校生や大学生で、これから歌手やアナウンサー、俳優、声優を目指す人にとって発声は何よりも大切です。
また、趣味で朗読をしたり、歌を唄ったりする人にとっても発声は気になるでしょう。
この記事では、次の2つのことについて解説していきます。
・歯並びが発声や滑舌に与える影響
・発声に影響する「出っ歯」「すきっ歯」「受け口」の矯正治療
目次
1 歯並びが発声や滑舌にあたえる影響

俳優や歌手の歯並びは整っていますよね。
見た目の美しさだけでなく、歯並びが発声にとって重要な役割を担います。
また、発声のしやすさはプロの俳優や歌手だけの問題ではありません。
学校や職場で他の人とコミュニケーションをとる時に、発声がうまくできないと黙りがちになります。
その結果、引っ込み思案になったり、対人関係が苦手になったりして楽しい毎日を送れない場合もあります。
1-1 歯並びが悪いと発音しづらい「音」

発声や滑舌に影響をあたえる歯並びは、次の3つです。
・上の前歯が極端に出ている出っ歯(上顎前突)
・歯と歯の間に隙間があるすきっ歯(正中離開・空隙歯列)
・受け口(下顎前突)
上記の歯並びは、歯の隙間から息が漏れたり、舌が正しく動かなかったりして、「さ行」、「た行」、「な行」、「ら行」と多くの発音に影響がでます。
特に「さしすせそ」は歯擦音(しさつおん)です。
歯擦音は歯と舌で、空気を歯の裏に当てることで発せる音なので、歯の間から空気が漏れるとうまく発音できません。
また、英語の発音も「th」と「s」の発音の違いがわかりにくくなります。
1-2 発音に影響する乱れた歯並びのデメリット

空気が漏れてしまう乱れた歯並びのデメリットは、他にもあります。
・見た目のコンプレックスが生まれる
【修正前】出っ歯や受け口は、顔面に出っ張りがあるため、顔のバランスが崩れて見た目に自信がない人が多いです。すきっ歯も、口を開いたときに隙間が黒く見えるため笑えない人もいます。
【修正後】出っ歯や受け口は顔のバランスが悪いため、見た目がコンプレックスに感じる場合が多いです。また、すきっ歯は歯と歯の間の隙間が広い見た目が気になり笑うことが少なくなります。
・胃腸への負担が大きい
前歯の噛み合わせが悪いため、食べ物をうまく噛み切れない場合があります。
食べ物を大きいまま飲み込むことで胃腸などの消化器官に負担がかかります。
・顎関節症になりやすい
特に受け口は、食事のときに噛み合わせのズレを無意識のうちに直そうとして顎を不自然に動かすことがあります。
前歯で噛めないために、奥歯や顎関節にかかる負担が大きくなり、その結果、顎関節症になりやすいです。
2 発声や滑舌をよくするための矯正治療
出っ歯(上顎前突)、すきっ歯(正中離開・空隙歯列)、受け口(下顎前突)の矯正方法についてみていきましょう。
2-1 出っ歯(上顎前突)の矯正治療

出っ歯は声が出しにくいだけでなく、口を閉じていても口元が前に飛び出している見た目が気になる人も多いでしょう。
・出っ歯の原因
出っ歯は、親の顎の大きさ、骨格、歯の大きさなどが遺伝することがあります。
また、指しゃぶりや爪を噛む、口呼吸、下唇を噛むなど、幼児期からの癖も原因になります。
・出っ歯の矯正治療
大人の出っ歯の場合は、出ている前歯を引っ込めて整えるために、口の中にスペースを作っていきます。
奥歯に歯を移動する隙間がない場合には、前歯と奥歯の間の小臼歯を抜いて歯が入るスペースを作る処置が一般的です。
また、歯が入るスペースを確保すると同時に顎の位置も内側に入るため、顔立ちが美しくなります。
一般的な矯正治療は、金属のワイヤーとブラケットを使用するので、装置が目立ちます。矯正装置を目立ちにくくする方法は次の通りです。
・マウスピースとワイヤーを併用
・歯の裏側に装置を付ける裏側矯正
・ワイヤーとブラケットが白いホワイトワイヤー矯正
上記の中でもマウスピース矯正は目立ちにくく、取りはずし可能です。
現在では、ほとんどの出っ歯がマウスピース矯正だけでも治療可能です。
2-2 すきっ歯(正中離開・空隙歯列)の矯正治療

すきっ歯は口を開かなければ見えませんが、口元におけるコンプレックスの大きな原因になります。
・すきっ歯の原因
すきっ歯になる原因のひとつが顎と歯のバランスの悪さです。
顎の大きさに対して歯が小さいと、すきっ歯になる可能性があります。
また、先天的に歯が欠損している場合もあり、中心から2番目の歯がないと、前歯に隙間できやすいです。
・すきっ歯の矯正治療
歯と歯の間をつめる矯正治療を行います。
一般的な治療法は、ブラケットとワイヤーを使う表側矯正です。
すきっ歯の状態によってはマウスピース矯正が可能です。
2-3 受け口(下顎前突)の矯正治療

下顎が上顎より前に出ているように見える受け口。
うまく発声できないだけでなく、食べ物がうまく噛めない、うまく飲み込めないなど日ごろの暮らしのなかでも不都合が出る場合があります。
・受け口の原因
受け口は骨に原因がある時と、歯が原因になる時があります。
骨を原因とする受け口の多くは遺伝です。
下顎は一般的に身長が伸びる時期まで、前方に成長する可能性があります。
成長が止まった時に下顎の骨が前に出っ張った状態が受け口です。
歯が原因の場合は、上の前歯が内側に傾斜していて、下の前歯が前に出ます。
これは指しゃぶりや下の歯を舌で押す癖によって受け口になってしまいます。
・受け口の矯正治療
受け口の治療方法は、原因によって変わります。
子どもの場合は、上顎の成長を促す装置や下顎の成長を抑制する装置を使って上顎と下顎のバランスを整えます。
上顎に対して下顎が大きく出っ張っている場合は、矯正治療だけでは難しく、顎を削る手術が必要なケースもあります。
また、抜歯をせずに矯正治療をしたい人には、NEAWワイヤーを使用した「非抜歯矯正」という方法があります。
NEAWワイヤー(Multiloop Edgewise Arch Wire)を使うと、歯を自由に動かすことが可能になり、抜歯をせずにバランス良く歯並びを綺麗にできます。
まとめ 発声をよくするだけでなく見た目の美しさも同時に追求
歌手や俳優、声優など声のプロを目指す人はもちろん、一般の人たちも面接や仕事でのプレゼンテーションなど、発声や滑舌をよくすると役立つ場面はたくさんあります。
また、出っ歯やすきっ歯、受け口は見た目の印象も減点されがちです。
声と見た目の両方をよくするために矯正治療は役立ちます。